悲劇の始まり

朝まで...

わたしは昔から浮気は嫌いだった

自分もしないかわり夫にも厳しかった

される前からうるさかった「もし浮気したら許さない」っていつも言っていた

だから夫は私に許してもらおうなどと思ってもいなかった

これは浮気なんかじゃない..本気だと言ってきた

息をするのも忘れてしまうほど私は何も言えなくなった

子供は頭を左右に振って泣いていた

いつもは寝るまで楽しい会話があった

そして...前日までここには笑顔があった

ちゃんと家族だった

ずっとずっと一緒に暮らす家族だった

言葉を失ったわたしの耳に子供の声が聞こえた

子供は激怒してもパパを愛していた

「別れるな!」と搾り出す声...

その心がパパに伝わったのか、

泣いていたパパが顔を上げて、私に言った

「ママはパパを許せるのかい?」と

わたしはだまって頷いた

その様子を見ていた息子が泣きながら「僕もゆるす」と言ってくれた

真夜中も1時をとっくに回っていたけど

その場でパパは相手の人にメールで別れを告げた

やり取りは朝まで続いていた

みんな寝不足でみんな疲れた

翌日パパが息子に「ごめんね」と言った

息子は小さく頷いた

学校へ出かけ、残ったわたしたち夫婦

夫がわたしに指きりしてくれた「二度と会わない」と

そのとき初めて私は声を出して泣いた

携帯電話は危険だと思う

職場の若い女性とアドレス交換で始まった夫の浮気は

この携帯電話さえなければ起こらなかったかもしれない

いつでも連絡がつくこと

秘密に会うことが出来ること

今すぐでも、別れたあとでも

楽しいはずの家庭の中に容赦なく侵入してくる相手のメール

わたしたち家族を脆くしてしまうきっかけはこんなことからだった

でも、このことは簡単には終わらなかった

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笑顔が消えた

パパに「ママは別れないよ」と震えながら言った。

涙が溢れた。

夫は熟睡していたところを起こされたからか

最初何を言っているのかわからないようだった。

起き上がり「携帯を見たのかい」と。

そんな会話が聞こえて、息子が自分の部屋から急いで出て来た。

ドアに手をかけ、その場に座った子供の鼓動が

こちらまで伝わってきていた。

夫が子供に「そっちへ行ってなさい!」と言うと

息子は壁をバンと叩いて初めて吐いた言葉...

うざい..

三度その言葉を繰り返すと、顔が見る見る赤くなった。

いつもは笑顔で明るい息子が初めて見せる姿だった。

夫は息子の前で私に言いました。

「別れてほしい...」

そのことに私が答える前に息子が父親に近づき..

「はっ?何で!」

真赤な顔が険しく変わっていった。

息子は「別れたらパパを殺してボクも死ぬ!」

16歳...甘えん坊でのんびりと育っためったに怒らない息子が

全身を震わせ父親に激しく向かっていきました。

私はすぐに子供の肩を抱え

「何があっても別れないから....ずっと別れないから」と言った。

夫が泣き

息子が泣き

私が泣いた

真夜中、我が家の寝室に悲しみがあふれた。

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どうして?

浮気って簡単に出来るものなの?

一線を超えるって悩まないものなの?

家族の顔が浮かばないの?

結婚20年。

思春期真っ只中の16歳の息子が一人いる。

私より先に父親を疑ったのがその息子だった。

いつも家族はひとつだった。

何処へ行くにも一緒だった。

ところが夫は今までと違ってきた。

一緒に映画を観たあと、仕事に行くと言って街で離れたり

そそくさとひとりで出かけたり....

それでもわたしは浮気なんて少しも思っていなかった。

息子から「パパ変だよ」と言われても疑ったりしなかった。

ただその時、夫のお財布の中を調べた。

中から私たちの写真が出てきた。

私と息子の写真を持っていてくれたことに喜ぶわたし。

でも息子の目は冷静だった。

息子は父親が寝入ったことを確かめてから携帯を見ようと決めていたらしく、

テストがまだ一日残っていたにも拘らずなんの躊躇いもなく覗いた。

わたしは今まで夫の携帯を見たことが無かった。

この時も見ることは出来なかった。

ただ、覗いている子供の顔をドキドキしながら見ていた。

最初息子は無表情だった。

徐々に眉間が険しくなっていった。

悲しい顔にも見えた。

2~3分も読んでいたでしょうか、携帯を充電器に戻し

少しじっと考えてから、私の顔を覗き込みました。

優しくうっすら微笑んで、わたしの頭をなでて

「ママ...自殺しないでよ」って...

「パパ...職場の人と浮気しているわ」と。

まさかの出来事に私の心臓はゴム鞠のように跳ね狂った。

息子が「これは近いうちにどうにかしないとだめだわ!」

そう言って自分の部屋に戻っていった。

お財布に入れてあった写真は

彼女から「見せて!」と言われて持ち出したものだということが

携帯の内容でわかった。

わたしはバクバクと荒れる心臓に手を置き、

息子に何も言わず、夫のお布団の横に座り

胸元の掛け布団をめくった

我が家にこんな話し合いは一生あるわけがないと思っていた。

真夜中の零時も過ぎてから、我が家初めてのバトルが始まった。

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心が痛くて苦しくて

浮気をする方が悪いに決まっている!

そうわたしは思っていた。

今も基本的にその考えは変わっていない。

でも..そのきっかけって私にもある?

最初は小さな不満だった。

どんな料理を作っても、パパは「美味しい」と言う訳でもなく

新聞見ながらテレビ観ながら携帯いじりながら...

ご馳走さまも言わずに、食べたらパソコンの前に座って

ひとりニヤニヤしていた。

自由気ままに自分中心に動いていた。

何だか独身男性が家に多額の下宿代を払って

間借りしているようにも思えた。

これが本当に間借りしてる他人だったら私も笑顔でいられたのに。

それでも我が家には笑顔は耐えなかった。

頑固親父じゃない夫は子供から「しつこい」と言われても笑顔だった。

妻に怒られても頭をポリポリ掻いて笑っていた。

感情的になって怒ることが一度もない夫だった。

買出しは休日の土曜日。

パパから「スーパーに買い物に行く?」と声がかかる。

だけど一緒に見て回ることはなく

いつも終わるまで喫茶店で待っていた。

多分、携帯から目を離すことなく...。

同じ家の中に居ても同じ椅子に座っていても

同じと感じない寂しさが徐々に私を変えていったかもしれない。

携帯やパソコンにヤキモチを焼き

「パパは誰に微笑んでいるの?」と聞くわたしの顔が

きっと鬼ババ化していたと思う。

いつしかパパは四角い冷たい物体の向こうに心地よさを見つけていた。

知らなかった。パパが浮気をしていたなんて。

のどかな我が家にこのとき初めて危機が訪れた。

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